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『来たれ、野球部!』/鹿島田真希 [講談社]

(あらすじ)
頭脳・容姿・運動神経の三拍子揃った「選ばれし」喜多義孝と、幼馴染みの目立たない「ふつうの」宮村奈緒。10年前に自殺した女子高生の一冊の日記をきっかけに学園のエースは異変をきたす。その時、彼女はーー!?(帯のあらすじより)

(感想)
純文学は全然読まない私ですが、何故か鹿島田真希の『6000度の愛』は読みました。長崎が舞台だったからなのですが。純文学作品経験の少ない私はさっぱりで、「やはり私に純文学は無理だな」と思ったものでした。

それから、数年。純文学作家のはずの鹿島田真希が、マンガ調の表紙!タイトルが青春ものっぽい!そして、「私は文学を高尚なものにはしたくはなくて、ドストエフスキーやバルザックのように三面記事を読んでネタにするような娯楽読みものでありたいと、この小説を書きました」との作者の言葉に期待してこの作品を手に取ってみました。一体、彼女が描く娯楽読みものとは一体どういうものか、と期待して。そして、フタを開けてみたところ、割と純文学寄りの作品で、やっぱり純文学作者なんだなぁ、と感じた次第でした。

この作品は4人の視点が次々と入れ替わりながら物語が紡がれます。エース・喜多義孝。幼馴染み・宮村奈緒。二人の担任の現国教師で野球部顧問・浅田太介。音楽教師・小百合。メインは高校生の二人ですが、その二人の関係に変化を与えるために、二人がいる、という感じでしょうか。

そして、物語のテーマですが、てっきりタイトルからして、義孝が甲子園を目指す話かと思ったら、全くそうではありませんでした。そういう意味では、見事なタイトル詐欺の作品です。では、この物語で描かれるテーマは何か、というと、私は「人を愛すること」「愛」だと感じました。余談ですが、読書メーターの感想を見たら、「生」と「死」の物語と書いている方もいました。

相手を愛するが故に、相手を何よりも尊いものと感じるからこそ、自分がそれに見合わないと考え、消極的になってしまう。臆病になってしまう。遠ざけてしまう。そんな二人の関係からスタートするところが面白いと感じました。ご存じの通り、私は普段はライトノベルばかり読んでいるのですが、そのあたりだとこの愛の形は描かれることが殆どありません。あったとしても、極端に卑屈な形になってしまいがちです。

それ故に、この輝く相手を好きになってしまった、それに劣る自分、という愛の図式が非常に新鮮に映りました。さて、それがどう変化するのか,と思ったら。意外な方向に行って吃驚。帯に、「純文学の気鋭が挑む、ハイテンション学園ラブストーリー」とありましたが、この辺がハイテンションなのかな、と感じました。ただ、普通の人が感じるハイテンションではないなぁ、という気がします。ついでに言うと「学園ラブストーリー」の部分にも違和感を感じます。

相手を思いやるが故に、自分の本心を押し隠してしまい、その結果すれ違いが生じたり。そのすれ違いが決定的な訣別を産んでしまったり。物語の展開としては、波乱に富んでいたかな、と感じました。ただ、それが不自然な形で愛を育んでしまったためであったことは自明であったし、そこから生まれたラストを見る限り、幸せな結末に向かっていくことを感じさせてくれました。途中、爛れたような展開だっただけに、ラストは明るく終わっていたと思います。

タイトルから、青春ものを想像したり、表紙から爽やかな青春ものを想像して購入すると、呆気にとられる可能性大だと思います。帯に絶賛のコメントが乗せられていましたが、こう感じられる人がどれくらいいるのかなぁ、とも思いました。文体自体が、確かに「娯楽読みもの」として通じる程度に合わせて来ているのですが、純文学の香りが感じられる部分もありました。内容自体も、歪な愛の形なので、好き嫌いが分かれそうな気がしました。

とはいえ、私はなかなか楽しむことが出来ました。「愛ってそういうところがあるよね」と思うところがありつつ。だからこそ人を好きになる、という行為は尊くて、素晴らしいんだよね、と思わせてくれました。義孝については、思うところがないわけでもないですが。

個人的には、この作品を読み終わった時に、『全滅なう』を思い出しました。方や純文学風味の娯楽読みもの。方やライトノベルと全然タイプの違う作品ではありますが。どちらも、『全滅なう』が「狂おしい愛」を描いた物語だとしたら、『来たれ、野球部!』は「狂気の愛」を描いた作品なのかな、と。若干ベクトルは違うものの、どちらも愛の持つ毒であり、尊い部分を描いた作品なのかな、と感じました。


来たれ、野球部

来たれ、野球部




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コメント 2

うふふ

この作品はエロかったよねっ((笑
by うふふ (2012-01-22 22:21) 

takao

うふふさん、コメントありがとうございます。

もともと純文学の方ですし、そちらの描写が多かったですね。
タイトルからは爽やかさを感じるのに、内容は肉体的な、と言うか。
それで、人間の内面を描いているのは分かりますが、何だかなぁ、と言う気もします。
by takao (2012-01-29 00:36) 

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