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『生徒会探偵キリカ 1』/杉井光 [講談社]

(あらすじ)
 僕が入学してしまった高校は、生徒数8000人の超巨大学園。その生徒会を牛耳るのは、たった三人の女の子だった。女のくせに女好きの暴君会長、全校のマドンナである副会長、そして総額八億円もの生徒会予算を握る不登校児・聖橋キリカ。
 生徒会長によってむりやり生徒会に引きずり込まれた僕は、キリカの「もうひとつの役職」を手伝うことになり……生徒会室に次々やって来るトラブルや変人たちと戦う日々が始まるのだった!
 愛と欲望と札束とセクハラが飛び交うハイテンション学園ラブコメ・ミステリ、堂々開幕!(裏表紙より)

(感想)
いよいよ、講談社が満を持して放つ講談社ラノベ文庫第一回配本作品の一つ。講談社ラノベ文庫自体見てみると、全部で8冊となかなかそろえてきたな、と言う印象を受けました。確か、ガガガ文庫(小学館)は5冊くらいだったような(うろ覚え)気がするのですが。執筆陣も、『神様のメモ帳』シリーズの杉井光。『東京皇帝☆北条恋歌』の竹井十日。『神曲奏界ポリフォニカ』の榊一郎。『けんぷファー』の築地俊彦。『マルタ・サギーは探偵ですか?』シリーズの野梨原花南(これしか知らないだけ(^^ゞ)と確かな作家をそろえてきた印象です。さらに、『進撃の巨人』のノベライズ作品。一六歳になったどれみ達を描く、『おジャ魔女どれみ16』。そして、第一回講談社ラノベ文庫新人賞大賞受賞作品の『魔法使いなら味噌を喰え!』と、さすがは大手出版社、と言いたくなるようなラインナップです。

さて、そんな創刊ラインナップに入っている本作ですが、タイトルを見ると、電撃文庫から出版されている『神様のメモ帳』を彷彿とさせる印象。私は、『神様のメモ帳』を読んでいないので、単純比較できないのが残念なところですが。そんな私が読んでみて、感じたのは「うん、ミステリ……じゃないよな」と言う事でした。

本作は、主人公が入学して生徒会に加わるところから、キリカの危機とそれの解決までが描かれました。そして、その中で起こった事件をキリカが見事に解決するところが描かれていたのですが。ただ、謎自体が正直言ってどうでも良いようなものに思えてしまったことや、あまりに謎を解くにしては情報が少ないこと。そして、その謎をあっさりとキリカが解決してしまうことから、ミステリ部分に関してはさほど満足感が高くないように感じました。ラストエピソードは、キリカの「会計」としての能力が試されているのであって、ここではもう「探偵」は関係ないよな、と言う印象でした。

では、本作の魅力は何か、と聞かれると、やはり「キャラ」となるでしょう。実際に読んでいると、キャラクターはライトノベル的な個性があって魅力的。女好きの暴君会長。憧れの先輩の弟である主人公を慕う、自分の武器に自覚的である小悪魔的なマドンナ副会長。そして、引きこもりで対人能力が極度に欠如しているような会計兼探偵(本作ヒロイン)。そのほかにも、監査や議長というキャラが登場。主人公を含むこの6人がメインで話を引っ張って行く、という感じでした。この賑やかなメンバーが登場し、物語を展開します。そして、物語を引っ張るのは、軽快なボケと突っ込みの応酬。これが物語を読み進めるのをぐいぐいと進ませていたように感じました。

個人的に良かったな、と思うのは、ラストエピソードです。前述のように、これはもう「探偵」は関係ないのですが、そのライトノベルだからこそ許されるようなスケールの大きさ。物語の盛り上がり。それが素晴らしかったと思います。読者には何が起こるのか分からないように展開して、その巨大な全貌が一気に見える、と言うのは圧巻でした。物語の解決としては、あまりにご都合主義すぎる、と言うか、リアリティに欠けているきらいもありますが、それはそれ。これはあくまでも「ライトノベルだから」と言う事で許して良いのではないかな、と思いました。物語が面白くなるなら、少しくらいの無茶は許しても良いかな、と。
 
(12/10追記)
言葉足らずだったところがあるようなので、詳しく。ラストの展開は、予算8億円を株取引で3倍以上に増やす、と言うもの。私は株取引をやったことがないので、全く無知なのですが、それが可能か、と首を傾げてしまいました。私的には、荒唐無稽なエピソードです。これがもし、一般の小説で描かれたとしたら、違和感がかなり大きいと思いますし、突っ込まれるのではないかと思います。しかし、ことアニメ、マンガ、ライトノベルというジャンルに限れば、このような突拍子もない荒唐無稽さも許されて良いのではないか、と私は思います。もちろん、許せない、と言う方がいらっしゃっても、不思議ではないと思います。
(追記終了)

ラストで見せた、キリカのデレがまた可愛らしくて、思わずニヤニヤしてしまうような。こちらまで幸せな気分に浸れそうな感じがして、読後感が非常に良かったのも好印象です。

気になる点としては、やはりラストエピソードの展開。これをどうとらえるかによって、物語の評価が大きく変わってしまいそうな印象を受けました。また、キャラクターのやりとりが本作の魅力であるのですが、どこをとってもずっと同じテンポ、と言う感じがして、1巻の途中からですら、既視感を感じ、飽きを感じてしまいました。この辺は少し残念だったかな、と思いました。

探偵、と言う部分を期待して読むと肩すかしを食らうかな、と。ただ、巨大学園を舞台にしたキャラクター小説、としてとらえると、なかなかおもしろかったように思います。突き抜けたものはないですが、安定した面白さ、と言ったところでしょうか。ラストのクライマックス含め、個人的には満足できる作品でした。

ここからは余談。さて、本作を読んでいて感じたことを一つ。最近は一般のミステリでもライトノベルに近しいような書きぶりの作品を見ることが増えてきています。そして、ライトノベルでも、ミステリを描くものが増えているような印象です。ミステリのラノベ化。ラノベのミステリ化、と言うような感じで、一見近しいようですが、やはりこの二つには大きな隔たりがあるな、と感じました。

ラノベ化するミステリ。これは、あくまでもキャラクターがライトノベル風に個性を与えられ、文章を軽快にし、読みやすさ、リーダビリティーを高めているのであって、あくまでも勝負する舞台は、「ミステリ」。物語の面白さの中心、物語の芯となる部分は「ミステリ」なんだな、と感じます。それに対して、ライトノベルのミステリ作品は、物語に謎解きをくわえているのですが、それはあくまでもエッセンスとして。謎解きは実はたいしたことがないことが多いように感じます。それでは、何が物語の芯になるか、と言うと、それは「キャラクター」。キャラクターの魅力を見せるのがメインであって、ミステリはそのキャラに「頭脳明晰」「推理力が高い」「発想が素晴らしい」というキャラをつけるために使われているように感じました。

果たして、このまま「ライトノベルみたいなミステリ」「ミステリ風味のライトノベル」それぞれが混じり合うことなくリリースされ続けるのか。それとも、この二つが高次元で交わり合って、「本格推理のライトノベル」と呼ぶべきものが出版されるのか。非常に興味深いです。すでに、米澤穂信さんの古典部シリーズや小市民シリーズがそれに近いような感じもしますが。今後どうなっていくのか、非常に興味深いです。


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chokusin

講談社ラノベ文庫のラインナップを見ましたが、偏ってるなあというのが偽らざる印象です。一作くらいごりごりのSFやファンタジーがあってもいいのになと。

>ライトノベルだからこそ許される
自分にはいまひとつピンとこないんですが、ライトノベルの定義から始めないといけなくなりますね。難しい。
by chokusin (2011-12-08 00:07) 

takao

chokusinさん、コメントありがとうございました。

あとがきによると、杉井光は予定ではファンタジーのバトルものを書く予定だったらしいです。ただ、書いていてしっくりこなかったので、今回のに書き換えた、ということです。多分、ファンタジーとかも今後出して行くのではないかと思います。SFはどうなんでしょうねw期待したいところではありますが、学園もの、ラブコメ、異能バトルが多い現場ですからねw

ライトノベルだから許される、というのは、結構ラストの展開が強引なんですよ。ネタバレ避ける為に詳しいことは書けませんが。多分、一般書籍でやったら、総ツッコミ食らうんじゃないかな?と。ただ、ある意味なんでもありなラノベなら、許されてもいい展開ではないかない?と思った次第です。
勿論、許さない、絶対にだ!という人もいると思います。
その辺、難しいのですが。
私としては、ゆるしてあげたいな、と。
そんな軽い感じです。
by takao (2011-12-08 00:19) 

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