So-net無料ブログ作成
検索選択
ポプラ社 ブログトップ

『KAGEROU』/齋藤智裕 [ポプラ社]

あすぱいさんのご希望にお応えしてwそこまで酷くはなかったですよw

KAGEROU

KAGEROU

人生に絶望し,自殺しようとしている40代の男・ヤスオ。彼がビルの屋上から飛び下りようとしたとき,それを謎の黒服の男が止める。全日本ドナー・レシピエント協会のエージェントを名乗るその男は,ヤスオがこの世から去る手助けをする,と告げる。それを受け入れたヤスオは,命について考えることになる。

 

って,帯の宣伝文句,あおりすぎですねw肉体と魂を分かつものに関しては書かれていないし,人を人たらしめるもの,って作中から考えると,あれになりますし。そもそも,「命」の物語,と言うのが誇大広告のような。

個人的には,ネットでたたかれているほど,酷評するないようではなかったとは思います。読みやすいですし,サラされ読むことができますし。ただ,気になる点が多いのも確か。と言う事で,気になった点を挙げていきます。

まず,テーマについて。完全に,作者の力がこれを描くために必要なところまで達していません。命についての考えが述べられている部分がありますが,どこか借りてきた言葉,どこかで見た言葉という印象を抱きました。「齋藤智裕」の言葉,と言うものが見つからなかったのが残念でした。「命」を描いている作品なのに,作者の命に対する考えが欠けているのはいただけません。もしかして,と思う部分に

「いまごろになってようやく気づいたんだけど,『死にたい』って,裏を返せば『生きたい』ってことなんだよね。死にたい気持ちが強いからこそ生きたい気持ちも強くなる。(後略)」(P.151)

と言う部分がありましたが。これに関しては,全く同意ができない,と言うか。何でこんなトンデモ理論になっちゃうの?としか思えませでした。ただ,この部分は人によって解釈が変わってくると思います。

もう一つ。この作品,黒服の男が「全日本ドナー・レシピエント協会」のエージェント,と言う部分で察しがつくかも知れませんが,移植が絡んで来ます。で,この協会は,表の世界で公表されているより進んだ技術を所持している,と言う事でしたが。これが説得力がないんですよね。理論の部分を強く求めるわけではないのですが,そんな技術を持っているんだ!と言う感じで描かれると,こっちは逆に覚めてしまう,と言うか。これでは,フィクションではなくファンタジーだよなぁ,と。まぁ,某「熱膨張って知ってるか」みたいに書いて突っ込まれるよりはマシ,とも言えるかも知れませんが。人工心臓に関しては,もうなんと言うか「スゲーw」としか言いようのないご都合主義でした。

オチに関しては,何だかなぁ,と。と言うか,その部分移植して人を生かすことに何の意味があるのだろうか,と言う感じもします。それこそ,人間の尊厳なんて,どこにもないような。

文の書きぶりは悪くなかったと思います。読みにくいこともないですし。文章が軽すぎて物足りなさを感じる人がいるかも知れませんが。もっとも, 読み応えのある文章を作品に求める人が,この作品を読むとも思えませんが。文が軽すぎて,作品の扱う重厚なテーマにあっていない,と言う事があるかも知れないなぁ,と思いました。どちらかというと,普通に恋愛のようなテーマを扱った方が良かったような気はしました。

まぁ,ネットに関して可哀想だなぁ,と思うのは,ギャグについて。ネタで「イギリスならジンだな。イギリスジン,なんちゃって」(P.22)が取り上げられているのを見たことがありますが。見ての通り,会話文なんですよね。つまり,この寒いギャグに関しては,そのキャラクターの色づけなんですよ。主人公なんですけども。営業としてたいした実績もなく,リストラされそうになって,それにカッとなって自分から退職した,と言う主人公のキャラ付けとして,この寒いギャグ,というのは良いと私は感じた次第でして。ラストに関しても,それがうまく生かされていたなぁ,と思いました。

と言う訳で,「何だ,やっぱり面白くないんじゃないか?」と思うかも知れませんが,私は一気に読んでしまいましたし,決してつまらないわけではないと思います。ライトノベル的,と言われるとその通りなんですけども。と言うか,本当に,「一迅社文庫からデビュー!」とかだったら,ここまでたたかれなかったようなw2000万円の大賞受賞作か,と言われると,私も「違うだろう」とは思います。次は背伸びせずに,自分の力にあったテーマの作品を描くと良いのではないかなぁ?なんて偉そうなことを思ってしまいました。正直,命を描くのだったら,もう少し見識を深めないと厳しいでしょうね。

まぁ,勝負は次の作品でどんなものを提供できるか,でしょうね。

 

おまけ

CIMG9279.jpg

最後の最後,このシールに激しく萎えた(´・ω・`)


ブログパーツ
nice!(33)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

恋文の技術/森見登美彦 [ポプラ社]


恋文の技術

恋文の技術




森見登美彦氏の新作は、書簡体小説(帯では「新・書簡体小説」と書かれていますが)。昨年は『美女と竹林』で随筆(らしきもの)に挑戦しており、作者の意欲的な姿勢が感じられました。bk1で販売開始してすぐに注文していて読み進めていたのですが、本日読み終えることが出来ました。

毎回書いているような気がしますが、森見氏の文章の特徴と言えば、軽い語り口とそこに交える堅いことばによって生まれる、独特の軽妙(決して軽佻浮薄ではない)な文体であると思いますが、書簡体をとった本作でもそれは健在。軽すぎず重すぎず、絶妙なバランスをもった非常に読みやすい文章が展開されていました。また、相変わらずの変態節がまじっていたり(第5話が「女性のおっぱいに目のない友へ」だったり)、既刊の作品を読んでいるとにやりと出来る部分が合ったりと、森見ファンとしては安心の内容でした。

今回の小説で上手いな、と感じたのは構成。全12話あり、1話毎に、主人公・守田一郎が様々な友(大学の先輩や友、妹、家庭教師の教え子、果てには森見登美彦まで)へと書いた手紙と言う形で構成されています。そして、話を読み進めることで、一つの出来事が様々な視点から浮かび上がってきます。例えば、第1話で大学の友が恋愛成就の願掛けに吉田神社で「成就するまでパンツを脱がない」と誓った、とありますが、第2話を読むと、それは大学の先輩がけしかけたことだと分かる、と言った具合です。また、前述のように、『夜は短し歩け世乙女』を読んでいる人にはこの「(恋愛が)成就するまでパンツを脱がない」というのは、パンツ総大将を思い出して、にやりとできると思います。このような展開で進んでいき、最後にあこがれの相手への恋文で終了します。

個人的に一番好きだった話は、第9話の「伊吹夏子さんへ 失敗書簡集」。これが最終話に繋がる、あこがれの相手への恋文の失敗例を、反省を交えて綴られたモノです。一つの失敗に対して、冷静な反省が出来ているのですが、反省を極端に実行するため、結局失敗してしまうといった調子が、かなりユカイでした。折り目正しい文章を書こうとして、えせ文語調で失敗し、その反省を生かしてくだけた文章を書こうとして、それで絞め殺したくなるような文章を書いてしまうあたりは、予想できたのですがかなりツボでした。

書簡体小説に読み慣れていないため、読むのに普段の2倍ほどの時間を要したと思いますが、それに見合っただけのおもしろさをもっていました。結果、非常に大満足です。森見氏の作品はいつも外れがないのが素晴らしい。このままの勢いをこのまま持続させて貰いたいと思います。今後も期待です。
ブログパーツ
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:
ポプラ社 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。